Pioneer F-780

Pioneer F-780 をゲット!

2009年3月11日、私のチューナーページのファンから Pioneer F-780 の寄贈を受けました。 PLL シンセサイザー FM/AM チューナーで、1981年発売開始モデルです。

1981年に定価49,800円で発売されたので、28年ものビンテージです。 (2009年3月現在)

寄贈者のコメントは以下の通りです。



早速、程度&動作チェック

  1. 外観は汚い部類です。 特にメタルメッキされたボタン(FM, AM, STATION CALL 1〜6)にサビが出ていて汚らしく見えます。 経験上、このサビは綺麗に取れると思います。 致命的なキズはないので、クリーニングでかなりマシになりそうです。

  2. 残念ながら、左側シーリングパネルのカバーが欠品しています。

  3. 入手した状態のまま電源 ON してチェックしました。



カバーを開けてみました

  1. 基板の作りは良く、部品が綺麗に整然と並んでいます。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

  2. 電源トランスはアナログ系 (+13V, リア側) とデジタル系 (+5.5V, フロント側) の2個使っています。

  3. IC を使用して合理化が図られています。 主な IC は以下です。


  4. FM フロントエンド部は4連バリキャップ方式です。 リニアプッシュプルフロントエンド と呼ばれる RF 部が Dual MOS FETを2本使用したプッシュプル構成になっています。

  5. FM IF 部は UP-CF 2個+CF 2個使っています。 Wide 時は [UP-CF]→[uPC1163H]→[uPC1163H]→[UP-CF]→[PA3007] の構成で、Narrow 時は [UP-CF]→[uPC1163H]→ [CF]→[HA1201]→[CF] →[uPC1163H]→[UP-CF]→[PA3007] の構成です。

  6. パルスカウント検波部は [PA5001]+[PA5002] で構成します。 [PA5001] で IF 周波数を 10.7MHz−9.44MHz=1.26MHz に変換します。 この 1.26MHz を [PA5002] でパルスカウント検波します。

  7. MPX 部は ダイレクトスルー MPX と呼ばれ、[PA4006] で構成します。 パイロット信号キャンセラー回路があります。

  8. AM 部は [HA1138] で構成しています。 3連バリキャップ方式 で高性能です。

  9. パイオニアには珍しく点検用の底板があります。 これがあるとメンテナンスが楽です。

  10. 使用 IC のロット番号より、この F-780 は1981年製と判明しました。 電源ケーブルの製造マーキングは1980年でした。



クリーニング



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

調整箇所の表示は F-780 の輸出モデル型式である F-9 の回路図 によります。

  1. FM 受信部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 F-780 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - FM : ON
    REC LEVEL CHECK : OFF
    FM IF-BAND : NARROW
    MODE : MONO
    - -  
    2 - - 76MHz 受信 L2 TP21 電圧 = 7.0V VT low
    3 - - 90MHz 受信 TC4 TP21 電圧 = 25.0V VT high
    4 - - - - 手順2と3を数回繰り返す OSC トラッキング調整
    5 76MHz 30dB 76MHz 受信 T2
    T3
    L1
    TP22 電圧 = 最大  
    6 90MHz 30dB 90MHz 受信 TC1
    TC2
    TC3
    TP22 電圧 = 最大  
    7 - - - - 手順5と6を数回繰り返す RF トラッキング調整
    8 83MHz 30dB 83MHz 受信 T5 TP22 電圧 = 最大  
    9 83MHz 40dB 83MHz 受信
    FM IF-BAND : WIDE/NARROW
    VR101 TP22 電圧 = WIDE/NARROW で同一電圧 IF NARROW GAIN 調整
    10 83MHz 60dB 83MHz 受信 T7 TP23〜TP24 間電圧 = 0V FM 同調点調整
    11 83MHz 60dB 83MHz 受信 T6 R54 (100Ω) 電圧 = 最大 パルスカウント検波調整 (1)
    シンクロスコープで観測
    12 83MHz 60dB 83MHz 受信 T9 TP11 = 1.26MHz パルスカウント検波調整 (2)
    周波数カウンタで測定
    13 83MHz 60dB 83MHz 受信 VR3 TP8〜TP9 間電圧 = 0V パルスカウント検波調整 (3)
    14 83MHz 30dB
    変調 : Mono 1kHz
    83MHz 受信 VR2 ミューティングがちょうど ON になるよう調整 ミューティングレベル調整

  2. REC LEVEL CHECK 信号レベルの調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 F-780 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - FM : ON
    REC LEVEL CHECK : OFF
    FM IF-BAND : WIDE
    MODE : AUTO
    - -  
    2 83MHz 80dB 83MHz 受信 - オーディオ出力電圧を測定する  
    3 - - REC LEVEL CHECK : ON VR8 オーディオ出力電圧 = 手順2の1/2 -6dB

  3. MPX 部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 F-780 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - FM : ON
    REC LEVEL CHECK : OFF
    FM IF-BAND : WIDE
    MODE : AUTO
    - -  
    2 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : OFF
    変調 : OFF
    83MHz 受信 VR6 TP14 周波数 = 76kHz±200Hz VCO フリーラン周波数
    3 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : OFF
    83MHz 受信 VR7 オーディオ出力電圧 = 最小 モレ19kHz Pilot 信号
    4 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : R/L ch. only 1kHz
    83MHz 受信 VR5 L/R ch. オーディオ出力電圧 = 最小 セパレーション調整

  4. AM 受信部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 F-780 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - AM : ON
    REC LEVEL CHECK : OFF
    FM IF-BAND : NARROW
    MODE : AUTO
    - -  
    2 - - 522kHz 受信 T10 TP21 電圧 = 2.0V VT low
    3 - - 1602kHz 受信 TC6 TP21 電圧 = 24.5V VT high
    4 - - - - 手順2と3を数回繰り返す OSC トラッキング調整
    5 603kHz 40dB 603kHz 受信 バーアンテナ
    T10
    TP22 電圧 = 最大  
    6 1395kHz 40dB 1395kHz 受信 TC5
    TC7
    TP22 電圧 = 最大  
    7 - - - - 手順5と6を数回繰り返す RF トラッキング調整

  5. 調整結果

    1. 全体に調整ズレがありました。 やはり製造後28年を経過していますからね。 (2009年3月現在)

    2. FM ステレオセパレーションとキャリアリークは以下となりました。 問題ない数値です。

      項目 IF BAND L R 単位
      ステレオセパレーション WIDE 55 56 dB
      ステレオセパレーション NARROW 29 28 dB
      パイロット信号キャリアリーク - -77 -72 dB
      オーディオ出力レベル偏差 (MONO) WIDE 0 +0.02 dB
      REC LEVEL CHECK 信号 - 304.7Hz
      -6
      304.7Hz
      -6
      dB



使ってみました

  1. Old Pioneer のとても良いデザインです。 F-780 は1981年度グッドデザインの部門別大賞を受賞しています。 F-780 より後に発売された F-120F-120D のほうが古臭いデザインに感じます。

  2. 機能関連

  3. FM の受信音はビックリするほど良い音です。 やはりパルスカウント検波の音でしょうか。 回路的には F-120/F-120D のほうが上(パルスカウント検波部と MPX 部)ですが、この音が出てデザインが秀逸なので、私は F-780 を好みます。

  4. FM アンテナ入力は F 端子なので、雑音電波が混入しないです。

  5. AM も予想通り、抜群の感度とオーディオクラスの音質です。

  6. 1981年にこれほどのチューナーを設計できたパイオニアの技術は凄かったと思います。 完成度が高いです。 現在のパイオニアには、F-780 クラスの高性能機がありません。 パイオニア以外のメーカでも同じです。 ですから「ビンテージ FM チューナー」というマニアの集いができるのです。 マニアは自分で修理して1980年代のチューナーを使い続けるのです。

  7. パルスカウント検波機に対する私の結論みたいなもの



レベルメータ



仕様&その他