Pioneer TX-8900U

Pioneer TX-8900U をゲット!

2015年9月2日に Pioneer TX-8900U のジャンク品を税込1,080円で入手し、9月23日に整備完了しました。

入手動機は検波方式が PBLD であることと、前作の TX-8900 より何が改善されたのか見極めたいと思ったからです。

販売コメントは以下です。
●中古並下品で、動作は確認済み
●後面の端子部にサビあり
●全体に汚れやスレ、所々に小傷あり
●ステレオランプが点灯しない
●付属品は取扱説明書です。

本機のシリアルナンバーは [WE1004573] です。

[照明を完全 LED 化] [天板を再塗装] [IC 交換] を実施しました。 写真はこれらの手入れを実施後です。 [ホワイト照明] [インディケータの怪しい輝き] が判ると思います。



早速、程度&動作チェック

  1. 外観

  2. 入手した状態のまま電源 ON してチェックしました



カバーを開けてみました

  1. 古き良き時代の作りです。 機能別に複数の基板・パーツで構成します。 コストがかかっています。

     


  2. 以下の IC を使用して合理化が図られています。 ・・・ TX-8900 より、かなり変更されています。

    メーカ IC 機能 備考
    HITACHI HA1197 AM Tuner System  
    HA1201 FM IF Amplifier (Single)  
    HA1452W 2-Channel Audio Preamplifier  
    MITSUBISHI M5109PR 差動増幅器 (デュアル)  
    Pioneer PA1001 PLL FM Stereo Demodulator 東光 KB4437 と同じ
    PA1002 AF Amplifier  
    PA2002 電源制御  
    PA3001 FM IF System HA11225 と同じ
    SANYO LA1222 FM IF Amplifier (Dual)  

  3. FM フロントエンド ・・・ TX-8900 と全く同じです。

  4. FM IF 部 ・・・ TX-8900 より、WIDE/NARROW 切り換えが追加されました。 素晴らしく豪華な構成です。

  5. FM 検波部 ・・・ TX-8900 と全く同じです。

  6. FM MPX 部 ・・・ TX-8900 にはないパイロットキャンセラー回路が追加されています。

  7. FM MUTING 部 ・・・ TX-8900 と機能的にほぼ同じです。 TX-8900 はリレー式でしたが、TX-8900U は専用 IC の半導体式です。

  8. AM 受信部 ・・・ TX-8900 より RF 増幅が1段追加されています。

  9. TX-8900 → TX-8900U でかなり回路構成が改善されています。



修理

  1. FM 受信時に左チャンネルから音が出ない。

  2. STEREO ランプが点灯しない。

  3. トランジスタの予防交換 ・・・ 必要かチェック

  4. 天板の補修

  5. 残件



照明を完全 LED 化しました

  1. オリジナル状態

  2. インディケータランプ

  3. ダイヤルスケールランプ

  4. 完成

  5. LED 化した感想



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. 調整ポイント

    基板 FM/AM
    区分
    種別 調整ポイント 調整内容 参考図
    フロントエンド FM L T1, T2, T3, T4 RF 図-1
    TC TC1, TC2, TC3, TC4
    L T5 OSC
    TC TC5
    IFT T6 IF
    チューナ基板 FM IFT T1, T2, T3, T4, T5 IF (WIDE) 図-3
    IFT T6 IF (NARROW)
    IFT T7, T8, T9, T10, T11 IF (WIDE/NARROW 共通)
    IFT T12 同調点
    VR VR1 S メータ (1)
    VR VR2 PBLD バランス
    VR VR3 S メータ (2)
    VR VR4 MUTING-1 レベル
    VR VR5 MUTING-2 レベル
    AM L バーアンテナ, T13 RF
    TC TC1, TC2
    L T14 OSC
    TC TC3
    IFT F8 IF
    MPX 基板 FM VR VR1 MPX VCO 図-2
    VR VR2 パイロットキャンセル
    VR VR3 ステレオセパレーション (WIDE)
    VR VR4 ステレオセパレーション (NARROW)
    FM/AM VR VR5 REC CAL レベル

     



  2. 電圧チェック

    基板 TP 標準値 実測値
    電源基板 3, 4, 5 +13V +13.08V
    6 +12.4V +12.48V

  3. FM 受信部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 TX-8900U の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - FUNCTION : FM MONO
    IF BAND : NARROW
    MULTIPATH/REC : OFF
    MUTING : OFF
    - -  
    2 10.7MHz 90dB
    変調 : OFF
    SSG 出力を
    チューナ基板 TP8 に注入
    チューナ基板
    VR2
    チューナ基板
    VR2 摺動子接点 (センター) = 0V
    PBLD オフセット調整
    3 チューナ基板
    T12
    T メータ = センター (0V) 同調点調整 (QR 検波)
    4 78MHz 78MHz 受信 フロントエンド
    T5
    OSC トラッキング調整
    5 88MHz 88MHz 受信 フロントエンド
    TC5
    6 手順4と5を数回繰り返す
    7 78MHz 10〜30dB
    変調 : OFF
    78MHz 受信 フロントエンド
    T1, T2
    T3, T4
    S メータ = 最大 RF トラッキング調整
    8 88MHz 88MHz 受信 フロントエンド
    TC1, TC2
    TC3, TC4
    9 手順7と8を数回繰り返す
    10 83MHz 10〜30dB
    変調 : OFF
    83MHz 受信 フロントエンド
    T6
    S メータ = 最大 IF 調整 (フロントエンド)
    11 83MHz 受信
    IF BAND : WIDE
    チューナ基板
    T1, T2, T3
    T4, T5
    チューナ基板
    TP52 波形 = 最大
    IF 調整 (WIDE)
    オシロスコープで観測
    12 83MHz 受信
    IF BAND : NARROW
    チューナ基板
    T6
    IF 調整 (NARROW)
    オシロスコープで観測
    13 83MHz 受信
    IF BAND : WIDE
    チューナ基板
    T7, T8, T9
    T10, T11
    チューナ基板
    T10 2次側波形 = 最大
    IF 調整 (共通)
    オシロスコープで観測
    14 90dB
    変調 : MONO 1kHz (100%)
    83MHz 受信 チューナ基板
    T7, T8, T9
    T10, T11
    オーディオ出力 = 高調波歪最小 IF 調整 (共通)
    T7〜11 は±90度以内が目安
    15 80dB
    変調 : MONO 1kHz (100%)
    チューナ基板
    VR3
    S メータ = 4.8 S メータ調整
    16 50dB
    変調 : MONO 1kHz (100%)
    チューナ基板
    VR1
    S メータ = 4
    17 手順15と16を数回繰り返す
    18 83MHz 14dB
    変調 : MONO 1kHz (100%)
    83MHz 受信
    MUTING : 1
    チューナ基板
    VR4
    VR4 を一旦反時計方向に回し切り
    徐々に時計方向に回しミューティング
    がかかったらストップ
    MUTING-1 レベル調整
    19 29dB
    変調 : MONO 1kHz (100%)
    83MHz 受信
    MUTING : 2
    チューナ基板
    VR5
    VR5 を一旦反時計方向に回し切り
    徐々に時計方向に回しミューティング
    がかかったらストップ
    MUTING-2 レベル調整
    20 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : OFF
    83MHz 受信
    FUNCTION : FM AUTO
    MPX 基板
    VR1
    VR1 を一旦反時計方向に回し切り
    徐々に時計方向に回し STEREO
    ランプが点灯する位置を記録・・・(1)
    VR1 を一旦時計方向に回し切り
    徐々に反時計方向に回し STEREO
    ランプが点灯する位置を記録・・・(2)
    VR1 を(1)と(2)の中間に設定する
    MPX VCO 調整
    21 83MHz 受信 MPX 基板
    VR2
    オーディオ出力 = 19kHz 成分最小 パイロットキャンセル調整
    22 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : L+R 1kHz
    チューナ基板
    T3, T4
    オーディオ出力 = 高調波歪最小 WIDE STEREO 歪調整
    23 83MHz 受信
    IF BAND : NARROW
    チューナ基板
    T6
    NARROW STEREO 歪調整
    24 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : R/L ch. only 1kHz
    83MHz 受信
    IF BAND : WIDE
    MPX 基板
    VR3
    L/R ch. オーディオ出力 = 最小 WIDE セパレーション調整
    25 83MHz 受信
    IF BAND : NARROW
    MPX 基板
    VR4
    L/R ch. オーディオ出力 = 最小 NARROW セパレーション調整
    26 90dB
    変調 : MONO 400Hz (100%)
    83MHz 受信
    IF BAND : WIDE
    - オーディオ出力電圧 = レベルを記録 REC LEVEL CHECK 調整
    27 - - MULTIPATH/REC :
    REC LEVEL CHECK
    MPX 基板
    VR5
    オーディオ出力電圧
     = 手順26の1/2 (-6dB)

  4. AM 受信部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 TX-8900U の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - FUNCTION : AM - -  
    2 455kHz 80dB
    変調 : 400Hz (30%)
    SSG 出力を
    チューナ基板の TP4 に注入
    チューナ基板
    F8
    オーディオ出力 = 最大 IF 調整
    3 600kHz 30dB
    変調 : 400Hz (30%)
    600kHz 受信 チューナ基板
    T13, T14
    バーアンテナ
    トラッキング調整
    4 1400kHz 1400kHz 受信 チューナ基板
    TC1, TC2, TC3
    5 手順3と4を数回繰り返す

  5. 調整結果

    1. FM ステレオセパレーションなどは以下となりました。 良好な数値です。

    2. 高調波歪率はステレオ 1kHz WIDE で 0.022〜0.042% 程度、NARROW で 0.22〜0.24% 程度でした。

      • 仕様よりかなり良いです。 当たりの個体かもしれません。

      • TX-8900U には WIDE が追加されているので、 TX-8900 より1桁良いです。 NARROW では同程度です。

      • TX-8900U は NARROW でも十分使えると言えます。

    項目 IF BAND L R 単位
    ステレオセパレーション WIDE 46 47 dB
    NARROW 46 46 dB
    パイロット信号キャリアリーク - -97 -100 dB
    オーディオ出力レベル偏差 (MONO) - 0 -0.08 dB
    REC LEVEL CHECK 信号 - -4.8 -4.7 dB
    421.9 Hz



使ってみました

  1. 悪くはないデザインですが ・・・

  2. 機能関連

  3. 性能・音質

  4. TX-8900 との比較

    比較項目 TX-8900 優位性 TX-8900U 備考
    デザイン フロントパネル 5mm 厚アルミ、彫刻文字     5mm 厚アルミ、彫刻文字  
    ダイヤル窓の飾りサッシ 光沢あり、マーカなし   光沢なし、マーカがあって邪魔  
    チューニングノブ 光沢あり   光沢なし、粗い筋入り  
    ツマミ 光沢あり   光沢なし、粗い筋入り  
    レバー 光沢あり   光沢なし  
    ダイヤルスケール照明 適度な明るさ   やや暗い (LED 化により改善した)  
    インディケータ照明 適度な明るさ   かなり暗い (LED 化により改善した)  
    ダイヤル板と指針 黒表示だけだが見易い     キンキラの飾りあり どちらも良い
    FM フロントエンド 5連バリコン     5連バリコン 全く同じ
    IF WIDE/NARROW 切換なし   WIDE/NARROW 切換あり  
    SAW フィルタなし   SAW フィルタ使用  
    検波 PBLD     PBLD 全く同じ
    MPX HA1156
    パイロットキャンセル回路なし
      PA1001
    パイロットキャンセル回路あり
     
    S メータ / T メータ HA1137     PA3001 同調点検出を兼ねる
    MUTING Power on-off muting     Power on-off muting 回路は違うが機能的には同じ
    S/N muting     S/N muting
    Detuning muting     Detuning muting
    Signal level muting     Signal level muting
    AM フロントエンド 3連バリコン     3連バリコン  
    HA1138 / RF アンプなし   HA1197 / RF アンプあり  
    FM/AM
    共通
    AF アンプ AF 基板として独立     MPX 基板に集約  
    トランジスタで構成   IC 化され信頼性向上 (PA1002)  
    ±13V デュアル電源駆動   +13V シングル電源駆動  
    REC LEVEL CHECK トランジスタで構成   IC 化され信頼性向上 (HA1452W)  
    電源基板 トランジスタで構成   IC 化され信頼性向上 (PA2002)  
    その他 電源 AC100V 50/60Hz 18W   AC100V 50/60Hz 22W
    (LED 化により 12W に改善した)
     
    外形寸法 420(W)×150(H)×365(D)mm   420(W)×150(H)×392(D)mm 奥行が 27mm 違う
    重量 9.1kg   9.4kg 300g 違う
    発売時期 1975年     1976年 1年違う
    定価 65,000円   65,800円 800円違う



仕様その他

  1. ドキュメント

  2. TX-8900U の輸出型式 TX-9500U のドキュメント

  3. 仕様は以下です。

    FM 受信部
    実用感度 (75Ω) mono 0.85uV/9.8dBf
    S/N 比 50dB 感度 (75Ω) mono 1.4uV/14.0dBf
    stereo 17.5uV/36.1dBf
    S/N 比 mono 82dB
    stereo 77dB
    高調波歪率 WIDE mono 0.05% (100Hz), 0.05% (1kHz), 0.07% (10kHz), 0.12% (15kHz)
    stereo 0.1% (100Hz), 0.07% (1kHz), 0.2% (10kHz), 0.5% (15kHz)
    NARROW mono 0.07% (100Hz), 0.07% (1kHz), 0.1% (10kHz)
    stereo 0.3% (100Hz), 0.25% (1kHz), 0.5% (10kHz)
    キャプチャーレシオ WIDE 0.8dB
    NARROW 2.0dB
    実効選択度 WIDE 35dB (400kHz)
    NARROW 85dB (400kHz), 65dB (300kHz)
    ステレオセパレーション WIDE 50dB (1kHz), 35dB 以上 (50Hz〜15kHz)
    NARROW 45dB (1kHz), 30dB 以上 (50Hz〜15kHz)
    周波数特性 20Hz〜10kHz ±0.2dB
    20Hz〜15kHz +0.2 -0.5dB
    イメージ妨害比 120dB
    IF 妨害比 115dB
    スプリアス妨害比 110dB
    AM 抑圧比 65dB
    キャリアリーク抑圧比 77dB
    ミューティング動作レベル (75Ω) mute-1 2.5uV/19.2dBf
    mute-2 14uV/34.1dBf
    アンテナインピーダンス 75Ω不平衡型 / 300Ω平衡型
    AM 受信部
    実用感度 300uV/m (バーアンテナ)
    15uV
    選択度 30dB
    S/N 比 55dB
    イメージ妨害比 70dB
    IF 妨害比 65dB
    総合
    出力レベル/インピーダンス FM
    100% 変調
    Fixed 650mV/4.2kΩ
    Variable 50mV〜1.3V/3.6kΩ
    AM
    30% 変調
    Fixed 200mV/4.2kΩ
    Variable 15〜400mV/3.6kΩ
    電源電圧 AC100V, 50/60Hz
    定格消費電力 24W
    外形寸法 420(W)×150(H)×392(D)mm
    重量 9.4kg
    その他
    発売時期 1976年
    定価 65,800円