KENWOOD KT-V990

KENWOOD KT-V990 をゲット!



早速、動作チェック



カバーを開けてみました

  1. 基板は二階建て構造で、このためにメンテナンス性が悪いです。 一階基板はチューナー回路で、二階基板は MPU などデジタル回路です。 蛍光表示器は二階基板に半田付けされており、その他の KENWOOD 製チューナーと作りが違います。 (フロントパネルを取り外しても蛍光表示器が本体側に残ります。) 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

  2. KENWOOD の基板の作りはかなり良いです。 SONY よりも良い基板材を使っています。 部品も綺麗に整然と並んでいます。 さすが、測定器や無線通信機器も製造しているメーカだけあります。

  3. FM フロントエンド部は5連バリキャップ方式です。 「アンテナ→シングル同調→FET→ダブル同調→ミクサー FET←OSC バッファ同調←OSC同調」の構成です。 オール FET 構成で、アンテナ入力段とミクサー部は 3SK122 という MOS 構造のデュアルゲート FET を使用しています。

  4. FM フロントエンドの同調回路はトラッキング調整できない構成です。 ・・・ちょっと手を抜いています。

  5. IF 部は CF フィルター3段+LA1231N です。

  6. DLLD (Direct Linear Loop Detector)という方式で、10.7MHz の IF 信号をダイレクトに PLL 検波します。 この PLL 検波内に、IF フィルターで発生する高調波歪みを低減する歪み補正回路 DCC (Distortion Correcting Circuit)を設けて高 S/N 比の検波を実現しています。

  7. MPX 部は LA3350+MC1495L、パイロット信号キャンセラーは LC 構成です。

  8. FM 部は以上の構成なので、かなりの高性能が期待できます。

  9. AM 受信部は LA1245 で全てを行っています。 2連バリキャップのフロントエンド構成でごく普通です。

  10. TV 音声受信部はたぶん普通の構成なのだろうと思います。 (比較する機種を触ったことがないので評価できない。)

  11. IC を使用して合理化が図られています。 主な IC は以下です。




修理

  1. フロントエンドや検波部の電源電圧を測ると +7.8V です。 ちょっと低いなぁ〜。 ・・・動かない電圧ではありませんが、ここは +12V 以上を使うのが通常です。

  2. 電源回路を調べました。 1に電圧を供給する Q55 の 2SC2167 パワートランジスタの電圧が以下でした。 原理的に B と E の電圧は同じくらいでないとおかしいです。 これでは逆バイアス状態です。 電源回路のパワートランジタ Q55 でエミッタフォロア回路を構成し、E より電源供給します。 そして、B にその供給電圧とほぼ等しい電圧をかけます。

      B : 0.5V
      C : 25V
      E : 7.8V
    
  3. Q55 の B に接続されているのは IC22 M5231 2pin です。 IC22 の電源電圧(1pin)を測ると 0V ・・・ これでは動かない。

  4. 原因を調べると、IC22 の 1pin と GND 間の電源バイパス用の電解コンデンサー C170 33uF 35V が短絡状態でした。

  5. C170 を手持ちの 47uF 35V と交換 → 見事!直りました!!!
    交換後、1の電圧は +15V になりました。 コンデンサの短絡パンクってそれほどない故障ですが、KENWOOD のチューナーでこれで2件目です・・・ぶつぶつ・・・

  6. 放送波で軽く同調点と MPX の VCO を調整すると、良い音がステレオで出ました。



調整

写真の FM stereo / AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)を使って調整します。

  1. FM 同調点の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 KT-V990 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    TUNING MODE : MANUAL
    ACTIVE RECEPTION : OFF
    RF SELECTOR : DISTANCE
    FM IF BAND : WIDE
    REC CAL : OFF
    - -  
    2 83MHz 変調 : OFF
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 L9 TP5-TP6 間電圧 = 0V ±20mV 以内

  2. FM フロントエンドの調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 KT-V990 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    TUNING MODE : MANUAL
    ACTIVE RECEPTION : OFF
    RF SELECTOR : DISTANCE
    FM IF BAND : WIDE
    REC CAL : OFF
    - -  
    2 - - 76MHz 受信 L14 TP3 電圧 = 3.1V VT low
    3 - - 90MHz 受信 TC1 TP3 電圧 = 24.2V VT high
    4 - - - - 手順2と3を数回繰り返す OSC トラッキング調整
    5 - - 83MHz 受信 L10 フロントエンド内
    R16 の左側波形 = 最大
    OSC BUffer 調整
    シンクロスコープで測定
    6 83MHz 変調 : OFF
    出力 : 30dB
    83MHz 受信 L1
    L4
    L7
    L17
    検波基板
    CN3 の 4pin 電圧 = 最大
    RF&IF 調整

  3. FM PLL 検波部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 KT-V990 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    TUNING MODE : MANUAL
    ACTIVE RECEPTION : OFF
    RF SELECTOR : DISTANCE
    FM IF BAND : WIDE
    REC CAL : OFF
    - -  
    2 83MHz 変調 : OFF
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 L11 L11 の 2次側波形 = 最大 シンクロスコープで測定
    3 83MHz 変調 : OFF
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 L12 TP7〜TP8 間電圧 = 0V ±20mV 以内

  4. FM MPX 部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 KT-V990 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    TUNING MODE : AUTO
    ACTIVE RECEPTION : OFF
    RF SELECTOR : DISTANCE
    FM IF BAND : WIDE
    REC CAL : OFF
    - -  
    2 83MHz Pilot 信号 : OFF
    変調 : OFF
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 VR3 TP20 周波数 = 76kHz±200Hz VCO フリーラン周波数
    3 83MHz Pilot 信号 : ON
    変調 : L only, 1kHz 100%
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 VR4 R ch. オーディオ出力電圧 = 最小 R セパレーション調整
    4 83MHz Pilot 信号 : ON
    変調 : R only, 1kHz 100%
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 VR5 L ch. オーディオ出力電圧 = 最小 L セパレーション調整

  5. FM DCC 部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 KT-V990 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    TUNING MODE : AUTO
    ACTIVE RECEPTION : OFF
    RF SELECTOR : DISTANCE
    FM IF BAND : WIDE
    REC CAL : OFF
    - -  
    2 83MHz Pilot 信号 : OFF
    変調 : 1kHz 100%
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 DCC 基板
    VR3 (DET)
    VR4 (MONO)
    VR6 (MONO)
    オーディオ出力 = 高調波歪最小 モノラル歪調整
    3 83MHz Pilot 信号 : ON
    変調 : L-R, 1kHz 100%
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 DCC 基板
    VR5 (ST-L)
    VR7 (SUB)
    オーディオ出力 = 高調波歪最小 ステレオ歪調整

  6. AM 部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 KT-V990 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : AM
    REC CAL : OFF
    - - AM ループアンテナを接続する。
    SSG 出力は10kΩ抵抗を介して EXT から注入する。
    2 531kHz - 531kHz 受信 L26 TP3 電圧 = 1.5V VT low
    3 1602kHz - 1602kHz 受信 TC2 TP3 電圧 = 8.3V VT high
    4 - - - - 手順2〜3を数回繰り返す VT トラッキング調整
    5 603kHz 変調 : OFF
    出力 : 60dB
    603kHz 受信 L27 シグナルレベルメータ = 最大  
    6 1395kHz 変調 : OFF
    出力 : 60dB
    1395kHz 受信 TC3 シグナルレベルメータ = 最大  
    7 - - - - 手順5〜6を数回繰り返す RF トラッキング調整
    8 603kHz 変調 : OFF
    出力 : 60dB
    603kHz 受信 L28 シグナルレベルメータ = 最大 IF 調整

  7. 再調整結果

    1. 特に FM フロントエンドと PLL 検波部が大きく調整ズレしていました。 再調整にて感度と音質が大幅に向上しました。

    2. 以下のように素晴らしい特性です。 音も素晴らしく良いです。 やはり KT-V990 は 隠れた名器 です。

    3. ステレオセパレーションは NARROW でかなり悪化しますが、これは NARROW 用調整ボリュームがないためです。 やむを得ないです。 ここが上級機との差別化なのでしょう。 逆に WIDE で使うと上級機に匹敵する性能と音質です。

      項目 IF BAND L R 単位
      ステレオセパレーション WIDE 67 71 dB
      ステレオセパレーション NARROW 29 27 dB
      パイロット信号キャリアリーク WIDE -68 -65 dB
      高調波歪率 (MONO) WIDE 0.00426 0.00426 %
      高調波歪率 (STEREO) WIDE 0.01487 0.00751 %
      オーディオ出力レベル偏差 (MONO) WIDE 0 0 dB



使ってみました



レベルメータ



プログラム受信のしかた



仕様