SONY ST-SA5ES (2号機)

SONY ST-SA5ES (2号機)

SONY ST-SA5ES (2号機) をゲット！

2009年4月8日、私のチューナーページのファンから SONY ST-SA5ES 故障品をいただきました写真は修理後のものです。（STEREO ランプが正常に点灯）
- 「SONY ではもう修理してくれないので、ゴミとして捨てるより研究用にどうぞ。」と言う訳です。
- 故障品をもらって喜ぶのは私のようなマニアだけと思います。ご覧の皆さんも捨てるチューナーがあれば、ぜひお譲りください。シンセサイザー方式のチューナーに限ります。
外観はマアマア良いです。
- フロントパネルは汚れてはいますが、割と綺麗で、キズも僅かでよく見ないと気が付かない程度です。リアパネル, 天板側板, 底板はいずれも綺麗で問題ありません。
- AM ループアンテナ接続端子は少し錆が出ています。 FM の F 端子は金メッキされているので、錆はないですが汚れはあります。
- 全体にはビンテージチューナーとしては良好の部類に入るのですが、何故か？リアパネル、天板、側板の取り付けネジだけが錆が出ているのです。全体に錆びているのなら理解できますが、何故ネジだけなのでしょう。どういう保管をされていたのでしょうね。
- FL パネルは綺麗で新品同様です。
- 一緒に添付されていたのは [AM ループアンテナ] [FM 簡易アンテナ] です。 [AM ループアンテナ] は SONY のマーキングがありますが、純正品ではありません。 [FM 簡易アンテナ] も純正品ではありません。 [リモコン] は欠品でした。
FM の動作状況
- 周波数ズレはなく、ちゃんと受信します。
- 感度劣化もないようで、微弱電波も S/N 高く受信できます。
- 問題はステレオにならないことです。寄贈者のコメントでは「正常に使っていたのが、突然ステレオ受信不可になった」とのことです。
- 音は 1号機で聴いたあの艶っぽいたまらなく良い音とは違い、何だかフニャフニャした音です。
AM の動作状況
- 手持ちのフェライトアンテナで受信してみました。
- 全体的に感度が低いです。
- 強い電波の放送局ではちゃんとステレオになります。 そうです、この ST-SA5ES は AM stereo 対応しています。

カバーを開けてみました

内部は少しゴミはありますが、問題なく綺麗です。修理後の写真です。写真をクリックすると拡大写真を表示できます。
内部のネジには錆は出ていませんでした。
内部をいじられた形跡がありません。多少はコア調整などをしているかもしれませんが、改造などはないようです。メチャクチャにいじられていると、修理が困難になるのです。
使用 IC のロット番号より、この ST-SA5ES は1997年製と判明しました。電源ケーブルの製造マーキングも1997年でした。

修理

状態からは「同調点検出回路辺りが故障」か「MPX 回路そのものが故障」と見立てました
- [FM フロントエンド] ～ [IF 増幅] ～ [PLL 検波回路] には全く異常はなく、良好動作しています。もちろん [同調点検出回路] も問題ありません。そうなると [MPX 回路] が故障していることになります。
  1. MPX 回路は右です。 ST-S333ESA の回路図ですが、ST-SA5ES も同じです。右の回路図をクリックすると拡大表示できます。
  2. MPX IC の CXA1064 の 7pin 辺りに手を触れると [STEREO] ランプが点灯することがあります。間違いなく MPX 回路の故障です。
  3. CXA1064 の 2pin は VCO で、456kHz (19kHz × 24) で発振しているはずです。シンクロスコープで眺めると、全く発振していません。
    
    CXA1064 は SANYO LA3450 と全く同じです。原型がディスクリート構成された SONY ST-S555ESX の MPX 部で、これを SANYO が SONY からの依頼で IC 化したものが CXA1064 で、SANYO ブランドで一般販売したものが LA3450 と思います。よって、LA3450 のスペックシートはそのまま CXA1064 にも当てはまります。
  4. CXA1064 そのものか、電解コンデンサの容量抜け、セラロック (セラミック発振子) が怪しそうです。交換部品が必要になる訳ですが、これは ST-S222ESA から抜き取ることにします。右の写真が ST-SA5ES に付いていた部品です。
    - ST-SA5ES には点検用裏板がないので、部品交換は一苦労です。このため、考えられる部品を一斉交換しました。
    - 交換した部品は、電解コンデンサ C301, C302, C304, C305、IC301 CXA1064、セラロック CF301 456kHz です。
  5. 直りました！チャン↓チャン↑ ・・・おそらく、本当に故障しているのはセラロックだと思います。
半田クラック
- メイン基板を取り外したついでに半田クラックがないか調べてみると、やはりありました。 RCA ピンジャックの半田付け部分です。手で RCA ジャックを揺らすと音が途切れます。
- 半田付け補修にて良好になりました。
全体にクリーニング
- 天板, 側板の錆びたネジは、アキバの「ネジの西川」に見本を持っていって探してもらいました。
```
　「これとよく似たものを20本ください」
　「これでどうだい」
　「おっ、いいねぇ～」
　「えい、105円だぃ！」
```
  鮨屋みたいですね。ネジを交換するとピカッと光って気持ちイイです。写真の上が純正ネジ、下が購入したネジです。
- リアパネルに見える銅メッキされたネジを内部の綺麗なネジと交換・・・内部は見えないので十分でしょう。
- 全体のゴミを排除してから OA クリーナにてクリーニングしました。黄色の汚れが目立ちました。おそらくタバコのヤニでしょう。くすんだ黄色だったのですが、新品時に近いゴールドの質感が蘇りました。

全体に再調整

ST-SA5ES (1号機) に記載の調整手順にて再調整しました。
感度や音質がグ～ンと上がり、ST-SA5ES 本来の艶っぽい音が蘇りました。
AM の感度が低い原因は RF 回路の調整ズレでした。

再調整結果は以下です。ステレオセパレーションは 70dB を超える素晴らしい値。 Narrow モードでも一般のチューナーより優秀です。

項目	IF BAND	L	R	単位
ステレオセパレーション	WIDE	70	75	dB
ステレオセパレーション	NARROW	49	48	dB
パイロット信号キャリアリーク	-	-71	-72	dB
オーディオ出力レベル偏差 (MONO)	-	0	0	dB
CAL TONE 信号	-	445.3Hz -5.9	445.3Hz -5.9	dB

使ってみました

全体的にゴールド基調の色合いでなかなか優れたデザインで私好みです。
- フロントパネルはアルミ材で、チューニングノブまでの高さまでヘアライン仕上げ、これより上はサンド仕上げと、凝った仕上げです。
- サイドパネルもヘアライン仕上げアルミ材です。この感じもなかなか高級感あります。サイドウッドと違って精密なメカという感じがします。
FM 受信
- 感度も S/N も一級品です。特に微弱電波もしっかり捉えて S/N が良いのに驚きます。
- 解像度があって華やかな素晴らしい音です。現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
  - ST-S333ESG → ST-S333ESA → ST-S333ESJ → ST-SA5ES の順でマイナーチェンジしましたが、FM の回路は全く同じで基板の部品配置まで同じです。
  - 不思議なことに、音質はこの順に華やかになっていくのです。 ST-S333ESG の少しおとなしい音が、ST-SA5ES ではキラキラした華やかな艶っぽい音です。
  - 回路は全く同じなので、何が違うのだろう？・・・推定ですが、使用している電解コンデンサの違いが音質に影響を与えているような気がしてならないです。
AM 受信
- 感度は良いです。純正のループアンテナでしっかり入感します。
- AM stereo は良い音です。 IF Band を Wide / Narrow に切換でき、Wide では高音がよく出て、フゥワァ～とした音の出かたです。
感度が良く、とても良いチューナーです。オーディオ全盛期黄昏の高級チューナーです。